コラム
カフェ開業に必要な資格一覧。申請手続きの種類や経営成功のコツを紹介
カフェなどの飲食店を開業するにあたっては、食品を扱う上での衛生管理や施設の防災といった観点で取得が必要な資格があります。資格の取得と同時に、それらができていることを行政に届け出て許可を取る必要もあります。今回の記事では、カフェオーナーとして開業・経営するうえで必要な資格一覧や申請手続きについて解説していきます。
【必須】カフェを開業するときに必要な資格
カフェを開業するときには、どのような資格が必要になるのでしょうか。まずは、飲食店を開業するにあたって必須となる資格とその申請方法について解説していきます。
食品衛生責任者
食品衛生責任者とは、店舗で扱う食品衛生管理の責任者です。飲食店を開くためには、各店舗ごとに「食品衛生責任者」を選任し保健所に届ける必要があります。食品衛生責任者はオーナー自らが申請者となるほか、従業員の中から選任することもできます。
資格取得方法は、各都道府県が実施している講習の受講が必要です。講習会は各都道府県の食品衛生協会が実施しており、通常1日で終わります。
(参考:一般社団法人東京都食品衛生協会「食品衛生責任者とは?」)
防火管理者
防火管理者とは、多くの人が出入りする建物などで火災による被害が起きないように、事前に防火管理の消防計画を作成し、防火する上で必要な業務を行う責任者のことをいいます。ただし、防火管理者はすべての飲食店で必要なわけではなく、客席数が30人以上ある比較的大きな店舗のみ必要です。また、店舗の延床面積によっても必要な資格講習が異なります。例えば、延床面積300平方メートル以上の場合では甲種講習となり2日で約10時間の講習、また延べ面積300平方メートル未満の場合は、乙種講習で1日約5時間の講習が必要となります。(参考:一般税団法人日本防火・防災協会「防火管理者とは」)
調理師免許は必須ではない
飲食店の開業には「調理師免許が必須」と勘違いされることもありますが、調理師免許を取得していなくても飲食店の開業は可能です。従業員に調理師免許を持っている人を雇う必要もなく、資格が無くても業務として調理をすることは可能です。ただし、調理師免許を取得するメリットもあり、例えば「食品衛生責任者」の講習が免除されることがあげられます。カフェ営業に必要というわけではありませんが、取得していることでお店のアピールポイントにもなると言えるでしょう。
カフェの開業に必要な申請手続きの種類
カフェの開業には、どのような申請手続きがあるのでしょうか。ここでは、申請手続きの種類をご紹介します。
飲食店営業許可申請
カフェに限らず、飲食店を営業する場合は、必ず「飲食店営業許可申請」を保健所に提出する必要があります。許可を受けるには、「食品衛生責任者の資格を持った人を店に1人以上置くこと」「都道府県ごとに定められた基準に合致した施設で営業をすること」といった条件を満たしていなければなりません。営業許可の申請は、一般的な流れとしては、開店の約2週間前までに管轄の保健所に書類と手数料を揃えて提出します。その後、検査員が施設検査を実施し、規定を満たしていれば許可証の交付となります。
菓子製造業許可申請
パンやお菓子などを提供するカフェの場合は、菓子製造業許可申請が必要となります。菓子製造業は、パン・ケーキ・洋菓子等を製造・販売する際に必要な食品衛生法の許可で、開業前に必要な申請です。この許可を取るためには、都道府県知事が定めた製造施設、製造設備などの基準に適合している必要があるため、製造場所の所在地を管轄する保健所で基準等の確認が必要となります。
個人事業の開廃業等届出書
個人で開業するときの事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したとき又は事業を廃止したときに必要な手続きが、個人事業開廃業等届です。個人事業としてカフェ開業を目指す場合は、開業する1カ月以内に最寄りの税務署に提出しましょう。
(参考:国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」)
深夜酒類提供飲食店営業届
カフェで深夜にお酒も提供したい場合は、深夜酒類提供飲食店営業届の提出が必要です。例えば、 深夜0時から午前6時までの間に、バーとして営業する場合などが該当します。深夜も営業したい場合は、開店する10日前までに所轄の警察署へ届け出をしましょう。
(参考:警視庁「深夜酒類提供飲食店営業(様式一覧)」)
カフェ開業に役立つ資格や免許は?
次に、カフェ開業に役立つ資格や免許についてご紹介します。いずれも必須ではありませんが、開業したいカフェの形態や、コンセプトに合わせて取得したほうがよいか検討してみましょう。
カフェ経営に役立つ資格
カフェなどの飲食店も、会社と同じように経営する上では経理などの知識も必要です。特に個人事業としてカフェをオープンしたい場合は、役立つ資格となるでしょう。
簿記
カフェを個人事業主として開業する場合、「帳簿管理」をすることもあるでしょう。帳簿をもとに店舗の利益を確定し、納税をします。店舗を経営する以上、利益をあげ続ける必要がありますが、簿記の知識があれば客観的にお金の流れを管理できるため、無駄な経費の削減や効率的な店舗経営に役立ちます。また、複式簿記を使うことができれば税金を納める上で優遇される「青色申告」を適用することができ、節税にもつながります。取得には、簿記の専門学校に通い受講する方法とその他に通信講座などもあります。
カフェの食事メニューを充実したいときに役立つ資格
飲み物だけでなく軽食などを提供したい場合には以下の資格が役立ちそうです。
栄養士免許
栄養士とは、都道府県知事の免許を受けた国家資格です。一般的には食生活のアドバイザーとして、学校や保育園、病院で食事の調理や提供をする人が取得する免許です。国家資格だからこそ、取得していれば栄養や食のバランスを考えるスペシャリストとしてアピールすることも可能で、カフェでのフード提供時の付加価値にもなります。また栄養士の免許を持っていれば、上記で述べた食品衛生管理者の講習会は免除されます。
(参考:厚生労働省「管理栄養士免許の申請について」)
野菜ソムリエ
野菜ソムリエの資格があると、野菜・果物の目利き、栄養、素材に合わせた調理法など毎日の食生活に欠かせない野菜・果物の幅広い知識を身につけることができます。カフェ開業でも、この資格を活かして健康的な食事メニューやヘルシー志向の人向けのメニューを提供することで、お店のコンセプトに合った運営が目指せるかもしれません。
(参考:一般社団法人 日本野菜ソムリエ協会「野菜ソムリエ」)
コーヒーにこだわったカフェにしたいときに役立つ資格
コーヒーにこだわったカフェを開業したい場合は、以下の資格取得を検討してみましょう。
JBAバリスタ ライセンス
JBAとは一般社団法人日本バリスタ協会のことで、コーヒーの正しい知識や技術の普及と、コーヒー業界全体の発展に貢献していくことも目的とした団体です。JBAバリスタ ライセンスを取得するためには、JBAの認定を受けた学校で「JBAバリスタライセンススクール」を受講後、試験に合格すると認定される仕組みです。JBAバリスタライセンスの取得は、コーヒーに関する「本物の知識とスキルをもっている」ことの証明にもなるでしょう。
(参考:日本バリスタ協会「JBAバリスタライセンス -プロフェッショナルのためのバリスタライセンス」)
コーヒーマイスター
日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)が認定する資格で、SCAJの会員であれば受験資格が得られます。コーヒーマイスターは、コーヒーについての基本的な技術や知識の習得をベースにしたもので、資格を取得すると、エスプレッソやドリップ、サイフォンといったコーヒー抽出の技術実習などにも参加できるため、より高度な技術の習得も可能になります。コーヒーマイスターになるには、申込費用とSCAJ会員の年会費が必要で、通信講座を利用すれば自宅にいながら受講することができます。
(参考:一般社団法人 日本スペシャルティコーヒー協会「Specialty Coffee Association of Japan」)
コーヒースペシャリスト
コーヒースペシャリストとは、実践的な知識と、現代に活用できる応用技術を身につけたコーヒーのプロフェッショナルです。美味しいコーヒーを淹れる技術、豆や焙煎による香味の違い、ラテアートやデザインカプチーノ、ペアリング理論に基づいたスイーツやフードのレシピや、ブレンディングなど、コーヒーに関するあらゆる知識を修得した専門家に与えられる資格です。通信講座もあり自宅に居ながら学ぶことが可能です。
カフェでお酒を提供するときに役立つ資格
ここでは、開業するカフェでお酒を提供するときに役立つ資格をご紹介します。
ワインエキスパート
一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)が1996年から認定している、ワイン愛好家の方向けの民間資格です。ワインエキスパートの試験は年に1回、夏から秋にかけて行われます。試験は、一次試験(筆記)と二次試験’(実技:テイスティング)に分かれており、一次試験を合格した人が二次試験に進むことができます。ソムリエより取得しやすく、実務経験なく受けることが可能な資格のため、カフェでワインを提供したい場合は取得を検討してみましょう。
(参考:「一般社団法人日本ソムリエ協会HP」)
カクテルアドバイザー
カフェでカクテルを提供したいときには、「カクテルアドバイザー」も役立つかもしれません。カクテルの知識の豊富さを証明できる資格で、お酒を提供する仕事のスキルアップを目指す人などにも最適な資格です。試験の内容は、カクテルに関する基本的な知識が中心となっており、実技試験はありません。カクテルアドバイザー通信講座を受講する必要があり、その講座の中で教本や資料、そしてDVDを通してカクテルについて学んでいきます。講座を修了した段階で試験問題が送られ、受験するという流れで取得します。
(参考:一般社団法人日本ホテルバーメンズ協会「HBAカクテルアドバイザー資格認定のご案内」)
カフェ経営を成功させるためのポイント
カフェを経営するにあたっては、事前の準備が重要です。ポイントをしっかりと把握し、それらをよく理解することが、カフェ経営を成功させるための第一歩となります。ここではカフェ経営を成功させるためのポイントをまとめてご紹介します。
カフェ業界を理解する
カフェ開業を成功させるためには、業界の動向やトレンドを理解することも大切です。カフェ開業は近年で比較的人気が高いビジネスですが、廃業する可能性も高いのが現実です。経営を軌道に乗せ、順調に運営していくためには、業界の動向を理解しながら、経営や運営方法を検討するとよいでしょう。
コンセプトにこだわる
カフェ経営を成功させるためには、まず業界を理解した上で自分が経営するお店をどのようなスタイルにするかといったコンセプトを決めることが大切です。カフェを回ったり、どのようなカフェがあるのかを調べたりしながら、自分のお店のコンセプトを考えてみるのもよいかもしれません。店舗のコンセプトが明確に固まっていれば、目指す方向もブレずに開業までの作業も円滑に進められそうです。
必要な開業資金を把握しておく
カフェの開業資金としては、物件を賃貸で借りる際の家賃や敷金・礼金、調理器具や食器・雑貨などをそろえる費用、もし店舗の内装を大幅に変える場合はその工事費用なども必要です。ここに、各種届出に必要な費用も加えた金額が必要資金となります。開業前には、実際にどれくらいの費用が必要かを検討し、把握しておくことも重要です。それに合わせて用意できる自己資金のほか、助成金や補助金の活用など資金調達の方法を検討しておきましょう。
シェアキッチンを利用してテスト営業する
開業をするにあたってシェアキッチンを利用してテスト営業してみると、実際に経営のイメージがしやすいかもしれません。シェアキッチンは施設と設備を他の利用者とシェアして利用するため、開業の際の初期設備投資を抑えることができます。そのため、開業のハードルも低く、初めてカフェ経営をしたい人も比較的挑戦しやすいといったメリットもあります。実店舗を構える前にシェアキッチンを活用して開業し、料理やサービスに問題がないかなどを確認してみるのもよさそうです。
(参考:シェアキッチンとは? 特徴や利用方法、運営事例について)
必要な資格や申請手続きを理解してカフェを開業しよう
カフェを開業するためには、さまざまな資格のほか、各種申請手続きが必要になります。資格の種類も色々ありますが、自分のお店のコンセプトに合ったものを取得することで、よりお店のアピールポイントになりそうです。カフェ業界の理解を深めてスムーズなカフェ開業を目指しましょう。