コラム
飲食店の利益率の平均は?計算方法や利益率を上げるために考えたいこと

飲食店を開業したいと思った際に、これから開業しようとしている自分のお店では、利益がどのくらい出るのかと不安になる人もいるのではないでしょうか。飲食店を経営していくためには、開業前にしっかりとシミュレーションすることが必要です。本記事では、飲食店における利益率の計算方法に加えて、利益を上げるための工夫を複数解説します。ぜひ、飲食店を開業する際の参考にしてみてください。

飲食店における「利益」とは

飲食店における「利益」とは飲食店の儲けのことを言い、一般的には粗利(売上総利益)と営業利益のことを指します。飲食業界は、開業から3年以内に50%前後の飲食店が廃業に追い込まれることもあるとも言われており、継続して利益を出していくのが厳しい業界です。そのため、経営者としては開業前に詳細なシミュレーションを行い、経営を継続していけるかどうかを見極める準備も大切になります。

ここでは、経営する上で理解しておきたい「粗利(売上総利益)」と「営業利益」について詳しく見ていきましょう。

粗利(売上総利益)

粗利は、商品を一つ販売したときの「儲け」のことで、「売上高」から「売上原価」を差し引いた利益のことを指します。計算式にすると、以下の通りです。

・粗利=売上高-売上原価

たとえば、500円で仕入れた商品を1000円で販売して売り上げた場合は、粗利が500円となります。

また、売上高に占める粗利のことは「粗利率(売上総利益率)」と言い、以下の計算式で求められます。

・粗利率=粗利÷売上高×100(%)

粗利が売上の何パーセントにあたるかという計算になるので、上記の式に当てはめると、500円(粗利)÷1000円(売上高)×100=50%となり、粗利率が50%の商品は一つ販売したら5割儲けが出ると言い換えることができます。

営業利益

また、営業利益とは「粗利益」から家賃や人件費などの「経費」を差し引いた収益のことで、以下の計算式で求めることができます。

・営業利益=売上高-粗利額-経費(固定費+変動費)

経費は大きく分けて固定費と変動費の2種類があります。

固定費とは、お店の売り上げに関わらず発生する金額が変動しない費用のことです。家賃や地代、減価償却費などが該当します。

一方、変動費とは、お店の売り上げに対して金額が変動する費用です。原材料費やアルバイトの人件費、水道光熱費、販売促進費などがこれに該当します。変動費は、売り上げの増減に合わせて変動する費用のため、こまめに確認して調整することで、無駄な出費を減らすことができるでしょう。

飲食店の利益率の計算方法

次に利益率について解説します。

利益率とは、「売り上げ」に対する「利益」の比率のことを指します。計算式は以下の通りです。

・利益率=利益÷売上高×100(%)

では、月の売り上げが300万円ある飲食店を例に利益率を計算してみましょう。

【家賃や人件費などの経費を差し引いたあとの営業利益が30万円の場合】

・利益率=30万円÷300万円×100=10%

つまり、この場合の利益率は10%となります。

飲食店の利益率は低い?高い?飲食企業の利益率ランキング

飲食店以外にもさまざまな業界がありますが、その中で飲食店の利益率はどのくらいなのでしょうか。まずは、飲食業界の平均利益率を見ていきましょう。

平均利益率

経済産業省が2007年度に調査を行った「飲食企業における売上高営業利益率調査」では、飲食店の平均利益率は8.6%という結果が出ています。規模別に見てみると、中小企業が11.4%、大企業が3.6%となり、中小企業が大企業を7.8ポイント上回っています。(参考:経済産業省「商工業実態基本調査・売上高営業利益率」)

利益率ランキング

次に、飲食業界の利益率ランキングを見てみましょう。

飲食業界利益率ランキング(2019年-2020年)

順位企業名利益率(%)
1コメダHD17.0
2アークランドサービスHD7.5
3ブロンコビリー6.7
4ヨシックス6.4
5壱番屋6.2
6王将フードサービス6.2
7日本マクドナルドHD6.0
8ハイデイ日高5.9
9スシローグローバルHD5.0
10ドトール・日レスHD4.6
(参考:株式会社デジタル&ワークス「業界動向サーチ、飲食業界利益率ランキング(2019 – 2020年)」

近年、個人消費が低迷する中でファストフードやファミレスは好調に推移していると言えるでしょう。2020年には新型コロナウイルス感染症拡大の影響で飲食業界も打撃を受けていますが、外出自粛やテレワークの普及による「巣ごもり需要」を取り込もうと、テイクアウトや宅配に注力する企業もランクインしている傾向が見て取れます。

飲食店の利益を出すために覚えておきたい指標

では、実際に利益を出すためにはどのように売り上げや経費をコントロールすればよいのでしょうか。ここでは「損益分岐点」と「FLコスト」について解説していきます。

損益分岐点

損益分岐点とは、お店の経営が黒字になるか赤字になるかの境目となるラインのことを言います。売上高が損益分岐点を下回ってしまうと飲食店の経営が厳しくなってしまうため、赤字にならないギリギリの売上高はいくらなのかを知っておくことが重要です。

損益分岐点の計算式は、以下の通りです。

・損益分岐点=固定費÷(1-変動費÷売上高)

 FLコスト

次にFLコストとは、食材の原価(food)と人件費(labor)のことを指し、その比率を求める数字のことをFLコスト比率と言います。FLコスト比率は飲食店の経営で重視すべき指標のひとつと言われており、これが高すぎると利益を出せないため、適正な比率を知っておくことは必要です。

FLコストとFLコスト比率の計算式は以下の通りです。

・FLコスト=食材費+人件費
・FL比率(%)=(食材費+人件費)÷売上高×100

なお、適正なFLコスト比率は一般的に60%未満がよいとされています。飲食店開業の際の参考にしましょう。(参考:「飲食店経営にはFLコストが重要!目安や業態ごとの適正値を解説」)

開業前に検討しよう!利益アップのために考えたい5つのこと

ここまで、飲食店における利益の考え方や指標などを解説してきました。以下では、利益を上げるための工夫をご紹介します。開業前からぜひ検討してみましょう。

①損益分岐点を下げる

利益を出すために覚えておきたい指標として、損益分岐点について解説しました。この損益分岐点、つまり赤字になるギリギリのラインを下げることが利益を上げることにつながります。損益分岐点を下げるためには、賃料などの固定費を下げることが有効です。一度店舗を契約してしまうとその後賃料の変更は難しくなってしまうため、店舗を契約する前に固定費を抑えることを検討してみるとよいでしょう。

また、客単価や想定客数から売上高の予測を逆算して、検討している立地の店舗で損益分岐点を超えられるか確認してみることもおすすめです。万が一損益分岐点を下回ると予想される場合は、出店地域や物件を変更することも考える必要があるでしょう。

②高収益メニューを作る

一般的に飲食店の原価率は30%程度にするのがよいと言われています。しかし、すべての商品の原価率を一律に30%に抑えるということではありません。すべての原価率を一律にしてしまうとお客様にとってコストパフォーマンスがよいと思われる商品がなくなってしまうため、客足が遠のいてしまう可能性があります。そのため、原価率の高い「集客商品」を数品作ってお客様を呼び込み、それと一緒に原価率の低いメニューも一緒に注文してもらうことで会計全体の原価率を30%に収めるという方法がおすすめです。

開店前にメニュー開発をする際に、集客商品と原価率の低い商品をバランスよくメニューに取り入れて原価率を抑える工夫をしてみましょう。

③オペレーションを改善し、人件費を削減する

前述の通り、飲食店経営においては食材の原価と人件費は大きな経費となるため綿密にコントロールすることが必要です。飲食店の売上高に対する人件費率は、25%から30%がよいとされており、人件費を減らすことでコストを大きく削減できると考えられます。

一方、人件費を削減しすぎると少ない人数で運営をすることになり、アルバイトなど働く人の環境が悪化してしまうことも考えられます。まずはオペレーションの改善として、開店前からPOSレジや受注システムを導入するなど、オペレーションを意識した投資を行なうのもよいでしょう。また、スムーズに動けるような導線の確保や、設備の配置などを検討して効率的に運営できる環境を整えることもおすすめです。

④食品ロスを減らす対策を考える

食品ロスが多いと経費が無駄になり、なおかつFL比率も上がってしまいます。このような食品ロスを減らすためには、在庫管理をしっかりと行うことが重要です。在庫が多すぎてしまうとロスする食材も多くなってしまうため、開業前に適正な在庫はどのくらいなのか、メニューごとに予測をして食材の仕入れ段階から在庫を意識した計画を立てるなど、対策を考えておきましょう。

⑤回転率を上げる工夫をする

回転率を上げる工夫をしてみることも利益を上げるためには必要と言えるでしょう。ターゲット層のお客様が来店される人数は、1組あたり1人から2人などと少人数なのか、4人以上のグループなのかによってテーブルのレイアウトも異なります。開店前から来客予測を考えて、レイアウトの変更をしやすい店舗作りを行ないましょう。

また、テーブルのサイズを小さめにして客席数を増やしたり、立ち飲みスペースを設置するなど、業態に合わせて工夫するのもおすすめです。

飲食店開業のシミュレーションはシェアキッチンが便利

飲食店の経営を軌道に乗せるためには、開店前から事前に利益率を意識した運営体制を作ることが大切です。固定費の削減など、開店後に変更しようと思っても難しいこともあるため、自分のお店を持つ前にまずはシェアキッチンなどを活用して運営のシミュレーションをしててはいかがでしょうか。シェアキッチンで営業をしてみることで、利益率やFLコスト、損益分岐点などがどれくらいなのか把握することができ、計画に無理はないかなど改善点も見つかることでしょう。シェアキッチンでのシミュレーション経験は、実際の経営に活かすこともできます。

利益率の計算方法を理解し、飲食店開業の準備をしよう

飲食店経営を安定的に続けるためにも、お店の利益率を計算することや、損益分岐点・FLコストなどの指標を理解することは重要です。開業前から利益率を上げるための対策を考えるのも、飲食店経営を成功させるポイントになるでしょう。自分のお店に合った運営方法を検討し、飲食店の開業を目指してみてはいかがでしょうか。