コラム
パン屋を開業しよう!失敗しないために必要な準備マニュアル
「おいしいパンを販売したい!」しかし、パン屋として独立開業を考えている人の中には、具体的にどのように開業すればよいのか分からず、悩んでる人も多いのではないでしょうか。本記事では、パン屋を始めてみたい人向けに、パン屋の実態や年収、起業のために必要な準備や資格、パン屋開業支援について紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
パン屋業界の実態とは
パン屋さんといえば、これまでは店舗内で製造した焼きたてのパンを店内に陳列販売するスタイルが主流でしたが、最近ではいろいろなタイプのパン屋が増えています。
例えば、以下のような業態のパン屋の場合は実店舗を持たずともパン屋として開業することができます。
・作ったパンをインターネット上で販売するオンラインパン屋
・予約制で配達を行うデリバリーパン屋
・スーパーや道の駅など他店舗の一角を利用して販売するパン屋
パン屋の開業にはさまざまな方法があるため、まずどのような販売スタイルが自分に適しているのかを検討してみるとよいでしょう。
パン屋の労働時間や年収はどれくらい?
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、「パン製造・パン職人」の労働時間は、全国平均で165時間/月でした。平均年収は334.7万円となっています。
(参考:厚生労働省 職業情報提供サイト「パン製造、パン職人」)
今後のパン屋業界はどうなる?
近年、日本におけるパンの消費は伸びており、今後も共働き世帯や高齢者の増加により、手軽に食べることのできるパンの需要は増え続けると見込まれています。矢野研究所が2019年に行った調査でも、日本国内のパン市場規模は年々拡大傾向にあるという結果でした。街中にあるパン屋の店舗数は、ここ十数年減少傾向ですが、この要因は後継者不足によるものと考えられ、今後もパン屋のニーズは減ることはないと言われています。
(参考:株式会社矢野経済研究所 「パン市場に関する調査を実施(2019年)」)
パン屋開業の流れ
パン屋として独立開業するにはパン作りの技術以外にもさまざまな準備や知識が必要です。また、製パン技術の習得にはいろいろな方法があり、開業までに必要な期間にもバラつきがあります。以下に開業までに必要な項目をまとめてみました。
・開業までの流れ
1 製パン技術の習得
2 経営の基礎知識を身に付ける
3 開業資金調達
4 必要な資格の取得
5 開業手続き
ここからは、それぞれの項目ごとにポイントを解説していきます。
製パン技術の習得
一般的に、パン屋になるにはおよそ3年から5年の修業期間が必要と言われており、製パンの技術はパン屋を開業する際には必要不可欠なスキルです。製パン技術は、パン屋での修行や企業が行うパン屋開業支援の研修受講などで習得できます。最近では未経験者を対象とし数日間の研修パッケージなどもあり、短期間で製パン技術を身につけることも可能なようですが、プロとして店をもつには、パン作りの十分な技術を習得する必要があるでしょう。
経営知識を身に付ける
パン屋になるということは、日々の売上などをきちんと管理し、店を経営していくための知識も必要です。店舗経営や売上管理の基礎知識を身に付けたい場合は、本で学んだり、経営セミナーなどに参加したりするとよいでしょう。また、開業前に経営理念やコンセプト、どのようなお店を目指していきたいのかなども明確にしておくことも重要です。
開業資金の調達
パン屋を始めるには開業資金を調達する必要もあります。必要な資金は、店舗を構える場所や、店舗販売かオンライン販売かなどの販売スタイルなどによっても大きく変わります。ここからは開業に関わる費用について説明していきます。
開業にかかる費用の目安
パン屋開業に必要な費用は数百万円から一千万円ほどとされています。物件を借りて営業する場合には、敷金や礼金などの初期費用、また店によっては内外装工事や専用の厨房器具を設置する必要もあります。どのくらい初期投資が必要かは条件によって異なるため、開業準備を進める中で具体的に見積もっておきましょう。
開業資金の調達方法
自己資金だけで開業資金が足りない場合は、日本政策金融公庫から「新創業融資制度」という融資を受けられる可能性があります。日本政策金融公庫とは、個人事業主や中小企業の資金援助に力を入れている金融機関で、この制度の融資要件は、創業資金の10分の1以上の自己資金があることとされています。
また、自治体によっては、創業者など地域の事業者をサポートする融資制度がある場合もあります。具体的な内容については出店する地方自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。
(参考:日本政策金融公庫「新創業融資制度の概要」)
取得が必要な資格
パン屋開業に向けて必要な資格に「食品衛生責任者」と「菓子製造許可」があります。2021年6月の食品衛生法改正により、一つの許可業種で取り扱える食品の範囲が拡大し、法改正以前には製造・販売するパンの内容に応じて求められた「飲食店営業許可」などの資格は緩和されているようです。詳しくは最寄りの保健所に確認するとよいでしょう。
(参考:厚生労働省「食品衛生法の改正について」)
(参考:東京都福祉保健局「「営業届出制度」の創設、「営業許可制度の見直し」について」)
食品衛生責任者
食品を扱う営業をする場合、必ず事業所に1人は食品衛生責任者の資格を持つ人がいなければいけません。食品衛生責任者は、自治体の食品衛生協会などが実施している食品衛生講習会をうけることで取得できます。
(参考:一般社団法人東京都食品衛生協会「食品衛生責任者養成講習会」)
菓子製造業許可
「菓子製造業許可」とは、食品衛生法に基づき、パン、ケーキ、餅菓子、飴菓子などを製造し、販売や店舗営業を始めるときに必要な許可で、パン屋を開業するには管轄の保健所に「菓子造業許可」の申請を行い許可を取得する必要があります。
開業に必要な申請
パン屋を開業するには、資格や営業許可の取得以外にもいくつかの申請が必要です。以下に必要な申請・手続きをまとめます。
個人事業の開業廃業等届出書(開業届)【税務署・都道府県税務署】
パン屋開業を個人経営で行う場合、「個人事業の開業廃業等届出書(開業届)」を税務署に提出します。確定申告の際に青色申告を選択するのであれば、同時に「青色申告承諾申請書」も合わせて提出するとよいでしょう。
(参考:国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」)
防火管理者選任届など【消防署】
店舗の収容人員が30人以上の場合は防火管理者も配置する必要があります。防火管理者になるには各地の消防署などが実施している講習会を受講します。
(参考:一般社団法人日本防火・防災協会「防火・防災管理講習」)
パン屋の開業を失敗しないためのコツ
ここまでパン屋開業に必要な準備や申請等についてまとめましたが、ここからは開業後に失敗しないため、いくつかのコツについて説明していきたいと思います。
開業支援サービスやスクールを活用する
最近は、パン屋経営のノウハウやスキルを学べる開業支援サービスやスクールがあり、サポートを受けながら自分のパン屋を開業することができます。プロに相談しながら開業準備を進められるため、独立することに不安があり誰かと相談しながら進めたい人などにおすすめです。
フランチャイズ店として開業する
企業の看板を掲げられるフランチャイズ加盟店として開業するのもよいでしょう。フランチャイズ店では、本部からのサポートや仕入れルート、ノウハウなど既に確立されている方法を生かしパン屋経営を行うことができます。ただし、加盟金やロイヤリティ、マニュアルなどが既に存在し、自分で商品開発や、営業時間、定休日などを決められないこともあるかもしれないため、契約内容をよく確認してメリット・デメリットを考慮し検討しましょう。
一人、もしくは家族など小規模で開業する
アルバイト・パートなどのスタッフ雇用をせずに、一人または家族で経営しているパン屋も多くあります。小規模で開業することで人件費を抑えることができ、利益率アップにつながります。
シェアキッチンなどを利用してテスト営業をしてみる
いきなり店舗を持ち開業するのではなく、シェアキッチンなどを利用して、まずはパン屋のテスト営業をしてみることも可能です。シェアキッチンの中には菓子製造業の許可を取れる設備を整えている施設もあり、CLOCK KITCHEN 氷川参道店もその一つです。シェアキッチンを利用するメリットは、既存の施設を利用することで初期投資がかからないこと、実際に店舗での販売の流れを経験できることで、店舗開業前のシュミレーションや開業後の売上予測などが立てやすいことが挙げられます。ぜひ活用してみてください。
事前準備をしっかり行い、人気のパン屋を目指そう
パン屋として独立開業するには、パン作りの技術や資格、経営基礎知識の取得、資金調達や手続きなどさまざまな事前準備が必要です。パン屋の業態や取り扱い商品によっても準備の内容は変わってくるため、自分の店舗ではどのようなパンを販売するのかをしっかりと検討し、開業準備を進めることが重要になります。本記事でまとめたポイントなどを参考に、ぜひシェアキッチンなどもうまく活用して、パン屋開業を目指しましょう。